<大人が気をつけること>

 

大人が気をつけること

ラグビーにおいて

20092010 ミニラグビー競技規則改定について」より抜粋

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はじめに

週末に多くの大人が、ラグビースクールで、ボランティアとして子どもたちにラグビーを指導している、という事実は、世界に誇るべき日本ラグビーの文化です。

近年のミニラグビーに対する各方面からの支援や、子どもたちのスキルの向上等は、これらのコーチたちの努力が実を結んだものだと言えるでしょう。

しかし、最近、安全への配慮を欠いている子どもの発達段階を踏まえているとは言えないプレーが散見されるようになってきました。

身体能力の高い子どもを選別し「勝つこと」を最大の目標にして活動しているチームの試合は、コンタクトの激しさ、戦法・戦術などは子どもの試合とは思えないほどであり、もはや「ミニラグビー」とは呼べないものになっています。

何より憂うべきは、試合中に大人がプレーヤーに怒声で指示を与えたり、コーチがレフリーに対して罵声を浴びせたり、さらには子どもまでもレフリーの判定に異議を唱えたりと、他のスポーツ界からも賞賛されてきた「ラグビーの美点」を損なう行為がまかり通っている点です。

子どもは小さな大人ではない

ミニラグビーと大人のラグビーとの最大の違い、それは「子どもは小さな大人ではない」という言葉に象徴されるように、プレーヤーである子どもが身体・精神的に発達の途上にあることです。

子どもは「なすことによって学ぶ」、つまり、体験を通していろいろなことを学んでいく存在です。ラグビーをプレーすることによって得られる様々な経験は、成功も失敗も、子どもにとっては将来の糧です。

もし、大人が、目の前の勝利を求めるあまり、子どもたちがラグビー本来の面白さ、そしてラグビー精神やラグビー文化を味わう機会を失っている、さらには誤ったラグビー観を子どもたちに植え付けているとしたら、それは将来に大きな悔いを残すことになります。

ミニラグビーに求めるもの昨年、(財)日本ラグビーフットボール協会普及育成委員会は、「ラグビー普及宣言2008」により、子どもたちに「3Side 精神」の厳守、指導者には

「3F のコンセプト」に従っての指導を求めました。

ラグビーという言葉には、グランドでプレーすることだけではなく、多くの社会的・情緒的概念が包含されています。

単にプレーのパフォーマンスや試合の結果だけでラグビー、特に子どもたちのラグビーを語ることは慎まねばなりません

我々がミニラグビーに求めるものは、ラグビーに関心を持つ子どもたちが、存分にラグビーを楽しむことであり、ラグビーが大好きになることです。さらには、子どもたちが、ラグビーを通じて健やかに成長することであり、ひいては、明日の社会を担う人材として成長していくことです。

ミニラグビーでの最優先事項「安全」について

(1)子どもの年齢、体力や発達段階、天候、グランドコンディション等を考慮した練習・試合を計画、実施してください(特に練習や試合での水分補給については十分に注意を払うこと)。

(2)ラグビーの魅力の一つとしてコンタクトプレーを挙げる人も少なくありません。しかし、それはプレーヤーの安全性が保証された上で初めて「魅力」と呼べるものです。

怪我をする、あるいは相手に怪我をさせる危険性を承知の上でプレーする、させるなどという事態があってはなりません。

特にミニラグビーに携わる大人は、怪我を誘発させるような行為・態度(たとえば、頭を下げて相手とコンタクトする、無防備な体勢でいる相手・体格差のある相手を力任せに突き飛ばす等)に関しては敏感であるべきです。

ミニラグビーをプレーしたがために、子どもたちの将来が損なわれることはあってはなりません。仮にそのような事態が生じた場合、ラグビーそのものの存在も危うくなるでしょう。プレーヤーの安全確保は最優先事項であり、大人は、子どもたちの安全を保証した上でラグビーをプレーさせる義務があります。

指導者(コーチ・レフリー)の態度について

lミニラグビーは、ラグビーの普及を第一のねらいとして行われるものです。

指導にあたっては、「Fight(闘志)」「Friend ship(友情)」「Fair play(正しいプレー)」(以上「3F」)のコンセプトが具現化できるように指導・試合計画を立案するとともに、次に挙げるような、ラグビーの魅力・独自性を、練習や試合を通して子どもたちに体験させてあげてください。

lあらゆる体型、サイズ、能力、スキルを持つプレーヤーが参加できる。ボールをもって走る、パスする、キックするなど、多彩なプレーが見られる。プレーヤー自身がラグビー精神を理解し、フェアプレーの精神に則ってプレーを展開する。

lプレーヤー・コーチがレフリーの判定を尊重し、レフリーもプレーヤー・コーチに対し敬意を払っている。また、プレーだけでなく、「On Side の精神反則をしない」「No Side の精神試合が終わったら相手チーム、味方チームの区別なし」「For the Side の精神

チームのために」(以上3Side 精神)等のラグビー精神、ラグビー文化について、繰り返し指導してください。

コーチとして

1. 試合に勝つことだけがミニラグビーをプレーする目的ではありません。「全てのプレーヤーに全てのスキルを」を念頭に、ラグビーの魅力を体感できるようにしてください。また、「自らを抑制する謙虚な心と思いやり」をもったプレーヤーを育ててください。

2. 子どもは大人とは異なった身体的特性・精神的特性を持っています。指導に当たっては、自分の経験からだけではなく、プレーヤーの年齢や心理的、身体的発達特性を理解した上で、その時期に適した練習方法を計画してください。

3. 小学生やその保護者にとって、コーチはラグビー精神の具現者です。レフリーに対して、オフィシャルに対して、全てのプレーヤーに対してラグビーに対して、どのように振る舞うのが正しいのかを態度・行動によって示してください。

4. ミニラグビーの良いプレーは、コーチとプレーヤー、レフリーが一体となって作り上げてください。よいコーチは良い(ミニラグビーの)レフリーになれる可能性があります。どちらも体験してラグビーに関する知見を広げてください。

5. 応援する保護者にも、ラグビーのプレーの魅力と独自の文化を広めていってください。特に、自分のチームだけでなく、相手チームのよいプレーについても拍手を送る、あるいは、相手の失敗を喜んだりしない、といった応援のマナーもラグビーの一部であることについては、機会あるごとにすべての保護者に伝えていただきたく思います。

レフリー、タッチジャッジとして

1. 子どもたちが楽しく・正しくラグビーをプレーできる環境を作るのがミニラグビーのレフリーの役割です。したがって、ゲーム中の事実を判定するだけではなく、ミニラグビー指導者としての立場が要求されることを認識してください。

2. レフリー・タッチジャッジは中立的立場であり、どちらのチームに対しても助言等をしてはいけません。プレーヤーに戦術的・戦略的な助言(危険なプレー、オフサイド等の反則を予防する為の指導は除きます)はできませんが、建設的な、良いプレーをしてもらうための声かけは必要です。

短く、分かりやすい言葉をかけてあげて、子どもたちがプレーを継続できるようにしてあげましょう。

3. ハーフタイムは、ハーフウェイライン付近にとどまるよう努めてください。試合が始まったら、コーチではなくレフリー、タッチジャッジとしての行動を優先しましょう。

4. プレーヤーに敬意を表するためにも、清潔でレフリーにふさわしい服装、毅然とした態度、親しみやすい言葉遣いと表情を意識してください。

5. ノーサイドを宣した後、双方のチームに対し、意欲を喚起するような励ましの言葉をかけてあげてください。

6. 試合後は、必ず双方のコーチと危険なプレー、好ましいプレー等について、共通の認識が持てるよう意見交換をしてください。

応援者として

1. 自分のお子さんや、自分のチームのプレーヤーへの声援はもちろんですが、相手チームのよいプレーについて賞賛してあげてください。

2. プレーヤーやレフリーへの暴言は厳に慎んでください。

また、相手の失敗を嘲笑したり、自分のチームのプレーヤーの失敗を罵ったりすることはあってはなりません。もし、そのような方がいらしたら、周りの皆さんが注意をしてあげてください。

コーチ

試合中、コーチは定められた区域内に位置し、プレーヤーに対して指導的な指示、助言を行える。ただし、子どもの自主性、判断力、応用力を養うことからヒステリックに怒鳴ったり子どもの人格を否定するような言葉を発したり、レフリーの判定に異議を唱えたりしてはならない。

上記のような言動が見られた場合、レフリーは、試合を停止し、コーチに注意をする。それでも改善が見られない場合、レフリーはそのコーチを退場させる。退場を命じられたコーチは、速やかに競技場から離れなければならない。

低学年の試合では、各チーム1名のコーチがグラウンドに入ることが許される。ゲーム中、グランドに入ることを許されたコーチは、自軍の最後尾のプレーヤーより後方で留まり、プレーヤーに対して建設的な指示・助言を行える。ただしヒステリックに怒鳴ったり、レフリーの判定に異議を唱えたりしてはならない。__